飛鳥の蘇
あすかのそ
産地日本、奈良県
原料牛乳
乳脂肪分?
形状6×7×3cmの箱形
タイプセミハードタイプ?
季節1年中
プロフィール6世紀大和朝廷の頃に大陸から入ってきたと言われる日本の古来の「チーズ」を再現したもの。
「蘇」というのはもともとインドの仏典の中のたとえ話として「牛乳は酪→生酥(しょうそ)→熟酥(じゅくそ)→醍醐と変化する」というくだりの「酥(そ)」から来ている。シルクロードを渡って日本に入ってきた時点で「酥」ではなく「蘇」と呼ばれるようになったらしい。作り方もインドのそれとは違うらしい。
残念ながら日本における「蘇」の作り方を詳しく記述した文献は見つかっていない。しかしいくつかの手がかりとなる文献や資料から「こんな感じであっただろう」と1987年に奈良国立文化財研究所の飛鳥資料館で再現したのがきっかけで、奈良県の酪農業者が製造販売を始めた。
作り方は全乳の牛乳を加熱しながら練って、どんどん煮詰めていくというもの。30リットルの牛乳を約7時間煮詰めて約4キロの「蘇」ができる。最初は真っ白だった牛乳も数時間加熱したらだんだん薄く茶色に色づき、煮詰まった頃には濃いキャラメル色になりねばねばとしている。そのねばねばした状態のものを24×14くらいの木箱に流し込み冷蔵庫で冷やし固める。固まったところを8等分して出来上がり。
味は何故かほんのりと甘く、そしてこうばしい。歯触りはしっとりとしたケーキかクッキーのような感じで、素朴なお菓子の様。

食べた感想この7月に初めて「飛鳥の蘇」を食べる機会がありました。 その味があまりにもチーズから遠いものなのでどのように作られるのか非常に興味を持ちました。そして何故古代日本の味を再現したのかどのようなところで作られているのかが知りたくて、8月14日に奈良県橿原市の西井牧場生乳加工販売所を訪ねました。(その訪問レポートは後日アップの予定です)
日本の古代のチーズ「蘇」を作っている工場は、ほんの数畳ほどの小さな部屋で、部屋中にキャラメルのような甘い匂いが立ち込めていました。「蘇」を作ることをここでは‘炊く’と言っていて、確かに大量のミルクを大きな釜に入れ火にかけ、ただ単純に何時間もかき回しているので、‘炊く’という言葉ひとつに集約するのもうなずけました。最初はサラサラの牛乳もでき上がる頃には‘クチャクチャ’と粘る音がするほどです。
でき上ったばかりの「蘇」を試食させてもらいました。冷蔵庫で冷やし固める前のものなので、温かくねばっと柔らかかったです。匂いはキャラメルのように甘いのですが、食べてみると穀物のようなこうばしさと滋味あふれる控え目な甘みが広がりました。この味、確かフランスのサヴォワの山小屋のみやげ物やで買った「ミルクのジャム」と同じような味です。ミルクのジャムの方はあとから人工的なフレーバーや甘みを足していたようでしたが、「蘇」は正真正銘牛乳以外の混ぜものが全くない無添加商品だと作っておられる西井さんがおっしゃっていました。
この「蘇」を欧米のチーズの概念で「チーズ」と呼べるのかどうか疑問ですが、珍品紹介にはもってこいの一品ではないでしょうか。むかし奈良時代、平安時代では「蘇」は滋養強壮の薬として珍重され、それを口にすることのできる人たちはごく限られた位の高い人たちだけだったそうです。今日、この「蘇」を 味わってみたいという人は
 西井牧場生乳加工販売所 
〒634 奈良県橿原市南浦町877 0744-22-5802

まで注文すれば地方発送をしてくださいます。直接こちらでも販売していますし、近鉄南大阪線橿原神宮前駅の構内の売店でも売っています。
合うワインワインよりも日本茶、または牛乳を添えていただきたい。
合うパンパンにはあわないでしょう。


昔は貴族などの裕福な人たちだけが口にできたそうです。

 


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