アボンダンス
Abondance
産地フランス、サヴォワ地方
原料牛乳
乳脂肪分48%
形状直径38〜43B、高さ7〜8B、重さ7〜12L
タイプハードタイプ
季節1年中
プロフィールサヴォワの中でもジュラに近いところに「アボンダンス谷」があり、そこにあった修道院で作られていたチーズがこのチーズであった。「アボンダンス」の名前は地名、そしてこの地方固有の牛の種類の名前からきている。
側面が車輪状に反っているのが特徴で、昔はこのくぼみに縄をかけて運搬したりしたらしい。同郷のボーフォールよりは一回り小さいサイズ(サイズにしたら1/4ほど)だが両チーズともこの側面のくぼみがトレードマークになっている。
熟成中はモルジュされるため(塩水に古いチーズの外皮を溶かした液体で拭く)自然に作られる外皮で覆われているが、やや湿っていてウオッシュタイプのような匂いが特徴。チーズの中身はアイボリー色で所々に小さなガス孔が見られる。
夏作りのものは色が濃く、チーズの味も複雑で味わい深い。
食べた感想私の最も好きなチーズ、ボーフォールの兄弟チーズとも言われているアボンダンスはボーフォールト同じで山のチーズとしては高級な全乳から作られているチーズです。普通は絞ったミルクの脂肪分をバターに、そして脱脂したミルクでチーズを作るためやや乳脂肪分の低いチーズが作られているのですが、アボンダンスなどは絞ったままのミルクをチーズにしています。
そして空気の綺麗な山に生える自然の草花を餌にしている牛から絞るミルクで作るチーズが美味しくないはずがありません。しっとりとしたチーズの身、そして香るとほのかに干し草とかナッツの匂いがして「香しい」という言葉がぴったりなチーズが生まれます。アボンダンスは熟成は最低でも3ヶ月しないとなりません。熟成中は塩水に古いチーズの外皮を溶かし込んだ「モルジュ液」でしめらした布で丁寧に拭いてケアーをします。そのためかウオッシュタイプのような古漬け臭い香りが外皮からしてきます(チーズには個体差があるので古漬臭が弱いものもありますが、ボーフォールに比べると匂う)。
そのため私はこのチーズには白ワインよりはミディアムボディー以上の赤ワインを合わせたくなります。そしてこういう感じのチーズはそのまま食べてももちろん美味しいのですが、溶かしてジャガイモとかパンとかに付けて食べると、また違ったおいしさが楽しめます。ちょうどスイスのラクレットチーズみたいに。そういえばアボンダンスの故郷とスイスのラクレットの故郷はアルプスを挟んで左右に位置しています。元はといえば同じチーズだったのかも知れません。
アボンダンスはフランスのAOCを持つチーズではありますが、それほどメジャーなチーズではありません。生産量もちょっと北の山岳地帯で作られているコンテに比べたら全然少ないですし、日本でも扱っている業者が限られています。先日珍しく近所のスーパーのチーズの陳列棚にカットして真空バック詰めをされたアボンダンスを見かけたので、即購入してみました。
パックにぴったりと表面が張り付いていて開封してみるとビニールの匂いが移っているような、蒸れたような匂いが鼻につきます。ナッティーなハードタイプの味をイメージしていたのですが期待は見事に裏切られました。さわってみた感じも心なしかしめって柔らかくなっているような。しばらくお皿に置いて自然乾燥をさせました。味の方は・・・期待していたような甘みよりは、皮に近い部分は苦みがかなり強くなっていて、焼いてみてもその苦みは消えませんでした。やはり真空パックにしてしまうとチーズの風味をかなり損ねてしまうものなんだ・・と改めて認識しました。
その後、その場でカットしてくれるチーズショップでアボンダンスのリベンジを。するとどうでしょう。新鮮です。チーズはパック詰めされているものとは違って湿ってはいないのですが、みずみずしいのです。木の実のような香りはもちろん、フルーティーで食べると旨みからくる甘みがありいくら食べられそうな気がしました。保管の仕方一つでチーズの生き死にが決まってしまう。逆に言えばアボンダンスはそれほど繊細なチーズなのかもしれません。
合うワインミディアムボディからややフルボディの赤ワインを。ボージョレの村名ワイン(モルゴンとかフルーリー)やボルドーでもリーズナブルな価格帯のワイン。
合うパンバゲット、パン・ド・カンパーニュなど。




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